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カテゴリ:本( 59 )

八月十五日の夜会

主人公の祖父の太平洋戦争末期の沖縄離島での出来事。
その様を淡々と語る3本のテープ。
地獄としか言いようのない、ほんの昔の日本の物語に呆然とする。

この方の本は、「水曜の朝、午後三時」を読んだのだが、
あれもまたすごく不思議な読後感であった。
誰かの独白をただ何時間も黙って息をのんで聞いている・・ような感覚。
それだけにリアリティがあって。
人一人の命がまるで軽かった時代。
その悲惨さや残虐さが当たり前だった時代が日本にもあったのだという、
「国の為に死ね」と言われれば、そうするしかなかった時代が
この国に確かにあったのだということを、後世の私達は、決して忘れてはいけない。

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私は今、この本を始め戦争中を描いた物語を読んだり、ドキュメントを見るように
努めているわけだが、そのきっかけとなったのは、以前にレビューした「永遠のゼロ」だ。
これは人に勧めるべき物語だと年下の友人に貸したところ、おじい様がラバウルに
行っていて帰還した方だったということで、
「まだ半分位なんだけど、もう涙が止まらない。近いうちに話を聞きに行こうかな」
「そうだね。多分私達が直接話を聞くことが出来る最後の世代だと思うよ」
などと、話していた。のだが!
なんとその2日後におじい様が突然他界されてしまったのである。
まるであの会話は虫の知らせのようで、二人して衝撃を受けたのだった。

それ以来、私も一昨年亡くなった祖父のことを母からよく聞いている。
祖父のことが私は本当に大好きだった。
ある事情で十年以上も会えなかったのに、大人になった私の名前を間違えずに
呼んでくれた祖父。祖父の人生は昭和史そのものの激動だった。
昭和の大津波で一族も家も全て失って、チリ地震の津波にも遭い、
八甲田雪中行軍の一員であったのが新婚だった為、メンバーから直前に
はずされて一命を取り留め、戦争中は、シベリアで戦い、抑留寸前で日本に戻った祖父。

平和な時代にぬくぬくと育った私には想像も出来ない程の過酷な人生だった。
祖父は、日本軍の命令もあり、八甲田のこともシベリアでのことも
ほとんど語ったことは無かったそうである。
ただ一言、「死んでいった仲間は本当に可哀想だった」と言ったそうだ。
語れない、語るには悲惨過ぎる現実を見たのだろうと思う。

母にはいつも津波のことだけを繰り返していて、孫の私にもよく話してくれた。
「海に行っても絶対に海に背中を向けてはいけない。必ず沖を見ていろ。
津波が来る時は、波が引いて沖が盛り上がるから。
いいか、津波は真っ黒なんだぞ。本当に恐ろしい力であっという間に呑まれるんだ。」
今回の大津波の映像を見た時、この祖父の言葉を思い出して何日も泣き暮らした。
同時に祖父がもう一度大津波に遭うことがなくてよかったとも思った。
戦争と、2度の津波を乗り越えた祖父の人生。
もっともっと話をしておきたかったと本当に心から思う。

長く生きてきた人はそれだけで本当に偉いと、生きることが大変になってきた今の私は
心から尊敬してしまうのだが、本でも映像でも話だけでも、先人の語ることに耳を傾け
如何に生きるかをもっと早く教えてもらうべきだったんだと最近特に思う。
せめて、たくさんの本を読んで、映像を見て、伝えていかなくてはいけないよね。

って、全然本の紹介でもなんでもなかった・・・。
by readytoflykiko | 2011-12-07 16:43 |

あやつられ文楽鑑賞

相方の一押し、「あやつられ文楽鑑賞」である。
読み始めは、よくわからない文楽の世界に若干とまどう・・・が!
10P程読み進むと、まーこれが面白いのなんのって!

私の場合、能の一節(抜粋みたいな?)仕舞いを習っていたことがあるが
文楽はちらっとテレビの芸能花舞台みたいなので見たことがあるきり。
その時も人形の動きにすごいな、と思いはしたものの、観劇に行くまでには至らず。
(なんせ、その他のヲタ活動に忙しい・・・欝)

こりゃ絶対文楽を生で見てみたいよー!と思いました。
とにかく三浦しをんの解説が面白すぎる。
それにここに書かれた演目なら構えずに入っていけそうだ。

解説で一番笑ったのが「仮名手本忠臣蔵」。
電車の中で何度も噴出しそうになり、笑いを堪えて震えながら読んだ(怪しすぎる)。
そんな大爆笑するような話ではないのは、皆さんご存知のとおりである。
日本国民なら涙を禁じえない、袂を絞る程のお涙頂戴なお話なのだ。

そこに現代との価値観の相違やなんでそうなった!って思っていたことに
鋭い突っ込みと爆笑解説がなされ、いやー、よくわかったよ、忠臣蔵。
ちなみに一番笑ったのは、由良助の息子と許婚の結婚に至る場面の描写、
そしてそれに突っ込み、憤る三浦さんの心の叫び(死)
もう震えたね、私は。

この本は、そんな面白い突っ込みをしながらも古典の鑑賞の仕方や
現代人ならではの見方、そして芸を極める人々の淡々としながらも
凄みすら感じる覚悟なども描かれていて、非常に勉強になる。
文楽、絶対行こう。
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by readytoflykiko | 2011-11-16 11:04 |

舟を編む

舟を編む・・・って?

そして帯の「辞書を編纂」という言葉に思わず膝を打ったものである。
ななななんて素晴らしい言語感覚。
なるほどなるほど。ああ、日本語って美しい比喩ができるんだな~。
言葉という海を渡る舟、を、編む。う、美しい・・・。

辞書の編纂という未知の世界を垣間見せてくれるだけでなく、
言葉の美しさ、言葉の持つ意味、ニュアンス、用法など
改めて辞書を引きたくなり、言葉について深く考えてしまう本作。
そして、自分達社会人にも共通の異動への戸惑いやら
人間関係やら新しい仕事を前に感じる壁を、個性溢れる登場人物の
目線で巧みに描いている。
三浦さんの登場人物の心理描写ってリアルだよなー。
本当に物凄くずばっと表現しているっす。
毎度毎度共感、且つ感動なのである。

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続き(ネタばれ)↓

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by readytoflykiko | 2011-11-14 15:23 |

至福♪

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本のストックが無くなったので、会社帰りに東京駅前の丸善へ。
金曜日。
大好きな丸善。
ウキウキベイブ♪である。

読みたいと思っていた「春を恨んだりはしない」を抱えて、震災関連本を1冊ずつ確認。
が、駄目だ。立ち読みだけで涙が出てきた…。
自衛隊の方の日記を読みたいと思いつつ、まだ苦しいので1冊だけにする。

それから神田古本まつりで三浦しをんのトークショーに行くので、「舟を編む」を単行本なのにドーンと買う!
辞書を作る人々の物語。もうそれだけでドキドキする。
トークショーの時にサインを貰いたいと思って買ったのだが、果たしてそんなサインイベントはあるのか?
わかりません。
とにかく持参するのだ。

あとは文庫本を4冊購入。
よく見ると全部女性作家だった!
食べ物系にファンタジー、エッセイ。
楽しみ!
by readytoflykiko | 2011-10-28 23:47 |

胸くそ悪い本2冊

図書会にて相方に借りた本である。

新幹線の中で読もうと思った乃南アサ「ウツボカズラの夢」。
読み始めたらあまりに胸くそ悪い物語で最速で読んでしまった。
早く読み終わって口直しを!

主人公は、高校を卒業して、亡くなった母親の従姉妹の家に身を寄せる。
病気の母親の代わりに家事をして看取ったにも関わらず、母親の死後
すぐに再婚しようとする父に絶望する主人公。
東京に出ればきっとどうにかなる、と出てきたものの、
呼んでくれた母の従姉妹は至極変わった女性の様子で、
恐ろしい姑もいる上に家族はバラバラ、、、
と最初のうちは一緒に不安を感じるわけだが、これまた裏切られるのが
主人公の女の子が一番胸くそ悪かったという・・。
最後まで気持ち悪さを耐えて読み切るとこれってホラー?って
位の怖さを感じられます。あー、こういう女が一番怖いよ・・・。
本当に・・読後感の悪さは保証いたします。

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で、口直しは奥田英朗の「邪魔」・・のはずがこれもまたキツイ(笑)
普通の人々がどんどん転落していく様を描いた物語。
ちょっとした出来心、ちょっとした違和感。
本当に小さな契機がこんなにも人を迷わせ狂わせるもの?
怖いよ~・・・。
何が怖いって自分の平凡な生活を守る為ならどんなことでもする・・
って誰もがそうなりそうだっていうこと。
小市民の転落人生ってすごいストレスを感じます。
頼むから放って置いてくれよ、奥田英朗さん!
という気持ちになる読後感の悪さでした(笑)

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by readytoflykiko | 2011-10-18 23:31 |

君はポラリス

久々に読んだ恋愛小説集である。

人は生まれながらに恋を恋と知っている・・なぜなんだろう。
というか、どうなんだろう、それ(笑)

自分に対して疑り深い私などは、慎重に慎重に吟味する。
これは、そうなのか?違うんじゃないか?思い込みじゃないのか?
自分のこともよくわからないのにどうして他人の何をわかって好きだと思える?

と言いつつも、例えばこの短編集のひとつ「優雅な生活」の俊明などは、
相当タイプだと言える。
なぜかは、よくわからない・・発想が独創的だから、かな。
でもそんな曖昧な着目点で、気になるからってそれを恋と言っていいのか!

ま、このようにまず疑ってかかる人も多数居るんだろう、男女問わず。
それを悶々と考えることが既に恋だと言うならお手上げなわけだが・・。

「誰かを大切に思うとき放たれる、ただひとつの特別な光。
カタチに囚われずその光を見出し、感情の宇宙を限りなく広げる恋愛小説」

と、解説にあったが、自分がなんだかわからない気持ちに翻弄されて
なんだかもう宇宙気味・・になるのは確かにそうなのだ。
他人に他人以上の感情を持つということは、未知の世界に足を踏み入れる
ような妙な感情をかき立てる。
今のところただひとつの光だと感じられるような思いは、持ったことが
あまりないけれど、そのような光を掴めるのであれば、私は私を
信じてあげることができるのだろうな、と思う。

光を探して生きてみますか・・・諦めずに(笑)

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by readytoflykiko | 2011-10-17 21:30 |

永遠の0(ゼロ)

とにかく感動の名作でした・・・。

泣いた・・・そして胸が締め付けられるように悲しかった。腹が立った。
太平洋戦争当時の国家の愚劣さ、非人道的で冷酷な軍部。
このような人達が本当に居たのかと信じられない・・・。
なぜこんな人達が起こした戦争で幾万の無辜の命が消えたかと思うと
悔しくて悲しい。

「生きて妻のところに帰る」

この一言が異様に感じられる時代。
そう言い続けた歴戦の名パイロット宮部の勇気に胸が痛い。
どれだけ強靭な精神力であったんだろう。

それを異様だと捉える戦友達も皆喜んで死ぬわけではない。
決して死にたいわけではないのだ。当たり前だ。
愛する家族や美しい日本という国を守る為に死ぬ。
そう自分の死に意味を見出さなくては特攻などできないだろう。

絶対に生き延びると誓った宮部がなぜ特攻に行ったのか。

最後に驚く結末が待っている。
本当に号泣するのを堪えることができなかった・・・。

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by readytoflykiko | 2011-09-01 22:52 |

お料理にまつわる本2冊

昔からお料理や食卓の光景が浮かんでくる作品が好きだ。

鬼平犯科帳や藤枝梅安が好きだったのも、池波正太郎の料理の描写が
なんとも言えずおいしそうだったから。
(そういえば梅安は、渡辺謙さんがやってたな。あと御家人斬九郎。かっこよかった・・)

で、最近は相方のお薦め「きのう、何食べた」がお気に入り。
よしながふみの漫画である。
大奥ではあのようなそのようなかようなことが!な作品で息も絶え絶えになるが
このお話は適度にゆるーく力が抜けていて、そして料理がしたくなる。
作っている料理が普通の家庭料理で、でもとても美味しそうなのだ。
あー今日これ作ろうって読みながらお腹が空いてくるお話です。
ちなみに軽くホモ漫(三浦しをん風に言うと)である。

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そしてもう1冊。
料理本の草分け?とかPOPに書いてあったけれど、本屋でぱらぱらめくって
途端にぎゅーっとお腹が空く気がした文章にいたく惹かれてお買い上げ。
相方との図書会の時に、これから20冊近くの交換をするってのに買い込んでしまった・・。

冒頭の下宿のご婦人が作るオムレツの美味しそうなこと!
思わずコレステロール値を気にしつつも(俺は遺伝的に高コレステロールである・・遺憾)、
「バタ」でオムレツを作ってしまった。おいしかった!!Billsのオムレツもいつかきっと食べる!

それにしてもフランス人の食に対する姿勢、いいなぁ。絶対気が合うと思う(笑)
こんなに”おいしいもの”を食べることが好きな僕ですが、少食で胃弱です。
天ぷらとか食べた日には確実に胃痛を起こし、かき氷を食べると風邪を引き、
焼肉を食べるとお腹を壊します。そしてにんにくは100%大変なことになるので食べてはいけません。
でも、気持ちは食べたいのです。たとえエアであっても。食いしん坊と言ってもいいでしょう!

そんなわけで、今日も美味しい文章を探して本を読み漁るのであった。

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by readytoflykiko | 2011-08-16 11:03 |

カラスの親指

詐欺師の中年二人組が、謎の少女、その姉と彼氏と仲間を段々増やしていき、最終的には
共通の敵であるヤクザを出し抜き大金を奪い取ろうとする物語。

奇妙な関係の中年男タケさんとテツさんコンビ。なんか不思議な関係だなー、という印象だったが
さらにそこにスリの少女が加わり、いつのまにか姉と変な彼氏まで同居を始める。
ヤクザに追われる日々を終らせてやろうと作戦を開始し、二転三転の後、平穏な日々が・・・。
ってところでさらにまた大仕掛けが待っていて、驚いた。それは・・それは予想外だったな。

実は道尾さんの本を最後まで読み通したのは初めて。
向日葵の咲かない夏を借りて最初の数ページで気持ち悪くて断念して以来だよ。
それでどうだったかというとやっぱり何か気持ちが悪いのだな・・・この方のお話。
なんでなんだろう(笑)
ちなみにこの感覚は私特有のものではなく、お友達や女子の先輩も皆そうなのだ。
お話自体は救いもあって驚きもあって、面白いんだろうけど・・・。
面白いんだろうけどキモチワルイ。
感覚なので説明できないのがまたキモチワルイのだが、この気持ち、誰か説明してくれないか。

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by readytoflykiko | 2011-08-09 12:23 |

猫を抱いて象と泳ぐ

伝説のチェスプレイヤー、リトルアリョーヒンの密やかな軌跡。
口をとざして(文字通り)生まれ、自ら成長することを拒み異形の姿で生き、
カラクリ人形の中で詩のようなチェスを指し続け、最後誰にも知られること無く
密やかに人生の最期を迎える。

痛々しく悲しい人生であるかのようだが、そこに不幸さは見いだせない。
リトルアリョーヒンの唯一にして最大の喜び、チェスの海で自由に泳ぐこと。
その望みを叶え続け、本当に幸せな人生を終えたのだと信じられるお話。

本当の幸せは本人にしかわからないけれど、幸せだったんだね、と
涙してしまうような・・・美しいけれど、寂しい、そんな物語だった。

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by readytoflykiko | 2011-08-01 16:33 |